クラシックネガの怨念
いやもう、ほんとタイトルまんまの記事であります。
2019年の11月末に発売されたFUJIFILM X-Pro3に搭載された新フィルムシミュレーション「クラシックネガ」の写りにやられてしまった僕。
でも、僕が持っているX-T30には当たり前ですがクラシックネガが無い。
だったら……Lightroomを駆使してどうにか再現できないものか? と考え、1年以上ずーっと試行錯誤を繰り返しておりました。
……あ、強烈に前置き長いエントリーです。
僕の葛藤を成仏させるというのが本旨でございますんで。
後ろのほうでプリセット無償公開しとるんで、僕の能書きなんぞどーでもいいという方は目次から飛んでください(笑
真面目に勉強したんじゃよ…
かみさんから借りたイラスト彩色の技法書を読んで「色とは何か?」みたいなところから勉強し、トーンカーブの使い方を調べ、デジタル写真がネガフィルムっぽく見える原理を学び、作例に適用しては微調整を繰り返し……。
その過程で、
こんな記事なんかも書いてみたりして。
今見返すと本当にヒドい記事なんですが、これ書いた後、空いた時間を見つけてはきちんと色相について理解を深めたり、どうしてトーンカーブをこの形にするのか? っていう理由をちゃんと考えたりしてたんですよ、ええ。
しかし……
その後、ネットに出てきたこのインタビュー記事が僕を打ち砕くことに…
富士フイルムのエンジニアの方が、いかに苦心してフィルムシミュレーションを作っているかという大変読み応えのある記事なんですが……少し引用してみましょう。
藤原 :クラシックネガはかなり特殊なフィルムシミュレーションになっていて、明度によって色の見え方が変わるような設計にしています。ですので、暗いトーンだとシアンに、明るいトーンだとマゼンタになるように調整しています。
んんん~!?
「露出によって表現がなぜ変わるの? まさかフィルムのように……、いやデジタルだからそんなハズは……」と、頭を悩ませていました。先程の藤原さんの「明度によって色の見え方が変わるような設計」というお話を聞いて謎がとけました(笑)。
なんだとぉ!?
——かなり複雑な処理で達成しているのでしょうか? 2次元的な思考で処理が行われているとはとても思えません。
入江 :単純に明度に応じて色を回すだけならそれほど難しくありませんが、色をまわした上で破綻のない再現にするという部分が非常に難しかった部分ですので、その意味でいえば複雑な処理を行っています。
藤原 :色は立体的に遷移させています。例えば、ひとつのシーンで人の顔を撮るにしても、ハイライトからシャドーまでたくさんのトーンがありますので、明度に応じて色を回すだけですと、中間調はスキントーンがニュートラルだけど、シャドーがグリーンになってハイライトがマゼンタになる、みたいな事が、ひとつの顔の中で起こってしまい破綻した再現になってしまいます。そういった「色ごとの方向」を整えて破綻のない範囲でフィルムのようなニュアンスを表現させるというのが、本当に難しかったところです。
これはつまり、クラシックネガで撮影した写真(JPG)は、毎回微妙に内部処理が異なっているものが出力されている……大げさに言うと、1枚たりとも同じ写真は撮れない/撮らないということなのでは!?
「……じゃあ、Lightroomで再現するのは、はなから不可能ってことじゃん!!」
クラシックネガのカメラプロファイルをLightroomで適用したとしても、カメラがその都度最適と判断した画にはならない……。
PC上でできるとしたら、X-RAW STUDIOを使うしかないと……そういうことですよね?
「FUJIFILMのカメラはJPG撮って出しこそが一番」
…よく聞くご意見ですが、クラシックネガはまさしくその究極型だったと。
これは……無理だ……。(膝から崩れ落ちる)
かくして、僕の1年4ヶ月に及ぶ挑戦は、幕を閉じたのでありました。
僕の1年4ヶ月を成仏させたい。
…で、冒頭の写真であります。
完全再現は不可能ということで終わった僕の挑戦ではありますが、クラシックネガに恋い焦がれて、自分なりに真面目かつ真剣に勉強して作ったプリセットを供養のために公開いたします。
当初はクラシックネガの再現を目指しましたが、前述の理由含めてアレコレ考えた末、最終的にはまったくの別物となっております。
クラシックネガは「あくまで憧れと尊敬の対象であるあの人」で、そこに自分なりの何かを加えられればと言いますか……まあ単純にまったくプロの仕事に及ばなかっただけと言いますか(笑
正直、どんだけがんばって勉強したつーても素人の片手間です。
著名なプロ写真家の方が制作に携わり、一般販売などもされているような高品質なプリセットとは比べるべくもありません。
「こんなもん作るのに1年以上もかけてたのかよ…」
そう思われるかもしれませんが、その点どうぞ大目に見ていただければ幸いです。
作例:ProNeg.Hi
『Basic_nega』。
ご大層と笑わば笑えの精神であります。
これが、僕の写真にとってのBasicになってほしい…そんな思いでつけた名前です。
作例:ClassicChrome
『Basic_nega_c』
c はシアン(cyan)の c であります。
先ほど引用したインタビュー記事に、「明るい場合はマゼンダが、暗い場合はシアンが乗ります」というようなことが書かれています。
膝から崩れつつも、せめてもうひとあがき! という気持ちで、明るめな写真の無印と、暗めな写真用のこちらと2種類を作ってみた次第です。
とは言え、「明るいから無印で、暗いからc」と用途を決める意図はありません。
合わせてみて、好きなほうを使ってみてください。
作例:ProNeg.std
こうして見ると、いかにFUJIFILMのフィルムシミュレーションが優れているか、素晴らしいかがよくわかります…。いいじゃん、どれも撮って出しで。
某漫画の台詞じゃないですが、
「上質な料理にハチミツをぶちまけるがごとし」
の精神を地で行ってしまっているようにも思いますが……成仏…成仏させてください。
ダウンロードはこちらから
ダウンロード後、適宜Adobe LightroomもしくはLightroomClassicに読み込んでご利用ください。
モバイル用のLightroomのみをお使いの方には、
こちらのDNG画像版をどうぞ。
画像をモバイルのLightroomに読み込んでいただいた後、設定をコピーペーストしてお使いください。
※注意事項※
こちらのプリセットは、FUJIFILMのデジタルカメラで撮影した写真で、
- ProNeg.Hi
- ProNeg.std
- ClassicChrome
のカメラプロファイルが適用できる場合を前提にして作ったものです。
AdobeカラーやAdobe標準、または他社製カメラプロファイルにも当てることはできますが、僕が意図した形にはならないことを予めご了承ください。
パラメータの調整はご自由にどうぞ。
ちょっとだけお願い
もしも…もしもこちらのプリセット気に入っていただけて(あるいは更にご自身で改良などされて)、TwitterやInstagramなどでプリセットを当てたお写真を公開される時は、良ければ……本当に良ければでけっこうですので、僕のTwitterアカウント、
もしくはインスタアカウント、
をタグ付けしていただけたら、必ずお写真拝見して、いいね/RTいたします。
僕以外の方が撮られた写真に当てるとどうなるのかはぜひ知りたいと思いますので、これも供養と思ってよろしくお願いいたします。
最後に…
クラシックネガに魅せられて以降、
「トーンとは?」
「色とは?」
ということを真剣に考えたことは、きっとこの先も写真を趣味にしていく上で大きな経験になったと思います。
富士フイルムにお勤めのエンジニアさんや、その他関係者の方にこの記事をご覧いただけるようなことは無かろうとは思いますが……それでもこの場を借りてお礼申し上げたいと思います。
僕をこんなにも夢中にさせてくれて、有意義な経験をさせていただいて、本当にありがとうございました。
……さて~、こうして怨念も無事に成仏させたことだし、クラシックネガ積んである機械買って、プロの仕事ぶりを堪能するかー!
GFX100Sは、ちょーっと無理だな!w
やっぱ、X-T30と入れ替えるとなると、S-10かE4かなあ。
100Vも良さそうなんだけど、fpと用途が被るよなーとか。