- 静止現像いかがっすか?
- 1.フィルムの準備
- 2.現像
- 3.定着前の水洗
- 4.定着作業
- 5.二度目の水洗
- 6.水洗促進剤を入れて最後の水洗
- 7.ドライウェルにくぐらせる。
- 8.乾燥させる
- 9.現像できていることを確認し、ニヤニヤする(笑
- 今回のお供
静止現像いかがっすか?
最近、Twitterの観測範囲でまたご新規さんの【自家現像チャレンジャー】が増えてきた気がする。
ただ、自家現像というとどうしても、
「適切な水温調整!」
「細かい現像時間の管理!」
「正しい手順の確認と実行!」
…みたいな、まぁひと言で言うと、
「うわめんどくせ…」
というイメージが先行して二の足を踏んでいる方も多かろうと思うのですが、どうざんしょ?
だもんで、どうにかこの負のイメージを払拭する手助けができないもんかと思い立ち、一度僕のやり方をきちんと記録してまとめたのが今回の記事です。
大丈夫! 簡単!
誰でもできます!
…なぜならば、ズボラ&不器用&大雑把の三重苦で常におかあちゃんに呆れられている僕でもできるんだから!
僕でもできることは、世の中の99%の人が僕より「上手に」できることだと思っていただいて間違いないです。自分で言うのもなんですが、僕の不器用加減はそういうレベルです。
じゃあ早速、みんなで楽しくズボラ自家現像していきましょー。
1.フィルムの準備
撮影が終わったモノクロフィルムを現像用のタンクに格納します。
フィルムを遮光した箱や袋の中でリールに巻き取るわけですが…ここばっかりは、手探りでやらないといけないので頑張っていただきたく…。
正直! 今回ご紹介する静止現像については「頑張る」ところここだけなんで! どうかひとつ!
ひとつだけアドバイスをすると、リールに差し込む前にフィルムの先端をこんな風にちょこっとだけ斜めにカットすると大変スタートがスムーズです。
ここで使う道具は以下のとおり。
フィルムの先端を引き出すピッカー。
僕はいわゆる「長巻」を使っているので、袋の中で詰め替え専用パトローネを手で分解してしまったほうが早いこともあり…あんまり使わないんですが、市販のフィルムを使う場合は必須です。
僕が使っているのは、こちらの現像タンク。
ステンレスより断然巻き取りやすいと思います。最初からリールも2本ついているし、リールの幅が可変式なので、通常の35mmもブローニーもどっちもいけます。
遮光した状態で作業をしないといけないので、これも購入。
大きいやつ買ったほうがいいと思います。
パトローネからフィルムを切り離したり、角を整えたりするのに使うはさみ。
…はい、無事にタンクに入りました。
がっちりタンクの蓋を閉めれば、ダークバッグから取り出してOKです。
手前に散乱しているのが、手で簡単に分解・組み立てができる長巻専用の金属パトローネ。
僕はスプールの軸にビニールテープを使ってフィルムを固定しているので、最後の始末もハサミを使わないで済み、ペリッと剥がすだけでOKなので重宝しております。
無事に格納できたら、そっと窓辺などに置いて眺めながら、
「よく頑張ったぜ、自分!」
と、暗闇の中手探りで奮戦した自分を褒めてあげて次へのモチベーションを高めましょう。
現像タンクは被写体。(くどい)
2.現像
2-1 使用する現像液他の確認
僕が使う現像液は、こちら。
ADOX ADONAL。
これ一択です。
ズボラ自家現像において、正直これを超える現像液は無いです。
以下、その理由を説明します。
- 圧倒的なコストパフォーマンス
- 常温・開封状態での長期保存が可能
コストパフォーマンスについて。
これは実際に液を作る際にまた説明しますが、一度の現像で使用する原液はわずか数ミリリットルです。
この1本の液を使い切るのに、僕は1年半かかりました。使っても使ってもなかなか減りません。他の現像液だとこうはいかないです。
保存が容易なのも助かります。
一回の現像では希釈した現像液を使い切る形になるので、この原液はどこかに保管しておく必要があります。
冷蔵庫や冷暗所に入れる?
いやいや、全然。
僕は、子供たちが絶対に手が届かないキッチンに作り付けたつり棚の上にそのままポンと置いてあるだけです。
逆に冷蔵庫とか入れてしまうと結晶化して使い物にならなくなってしまいます。
時間がたつと透明度が薄れ、なんかヤバい感じの茶褐色になってきますが…全然気にしなくて大丈夫です。どんだけ変色してようが問題なく現像できます。
長期保存が可能とうたっている他の現像液でも、せいぜい保管期限は三ヶ月といったところですが、こいつは前述のとおり使い切るのに一年以上かかりました。それだけの期間、ぽんとその辺にほっぽっといて平気なのです。(ただし! お子様などには絶対に触れられないようにご注意を! かなりの劇薬でもあります)
毎度おなじみ「かわうそ商店」さんでは、100ml入りで1,780円なり。
一回の使用量はだいたい6〜7mlなので、14〜15回は現像可能。
35mmフィルムなら大体30本分くらい処理できて、フィルム2本の現像に使う金額は130円弱で済むというリーズナブルさ。
これ、お店で頼むとどんなに安くてもモノクロ現像なら1本1,000円です。
しかも、現像に出してから戻ってくるまで2週間待ちです。
…自分でやれば、その日のうちに仕上がりを確認できますよ? やらない理由、なくないですか!?
定着液と呼ばれる薬品です。
僕はド定番の『スーパーフジフィックス』を使っています。
こちらも2倍に希釈して使うのと、一度作った定着液は何度か使い回せるので経済的。
他には、無くてもいいけどあったほうが絶対にいい、
Amazonだと今取り扱い無いようなので、上記リンクはヨドバシカメラ。
それから、
フィルムを干す際に水滴残りを防止するドライウェルという薬品。
これは台所用洗剤でも十分代用可能。界面活性剤ならなんでもいいのでは?
通常なら他にも現像の進みを止めるための「停止液」というものが必要なんですが、僕がやっている静止現像においては必要無いです。
理由は後ほど。
ともかく、一個薬品を用意する手間が無くなるのでズボラ現像派には助かるはず。
2-2 現像液を作ってタンクに入れる。
では早速、現像液を作っていきましょう〜。
まず先ほどの『ADOX ADONAL』を7ml計ってビーカーなどに投入。
分量ちゃんと計れれば、ヤカンでも水差しでもなんでもいいです。
7mlってこんなもん。
ほんと、ちょびっとだけ。
約20℃の希釈用水を作成。
水道水でいいです。
僕は最初にお湯を出して、そこに冷たい水を足すことで20℃に近づけています。
通常の現像ではこの水の温度管理も割と重要だったりしますが…静止現像ではそこもアバウトで大丈夫です。プラスマイナス2℃くらいなら特に気にするこたーありません。
ざっくり20℃。これでOK。
今回は奇跡的にジャスト20℃のお水が作れて、自分でもちょっと感動しました(笑
作った20℃の希釈水で原液を希釈していきます。
…100倍まで!
今回はフィルム2本分で7mlの原液を使ったので、700mlになるまで水を入れます。
これもうほぼ水です。びっしゃびしゃのシャバシャバです。
できた現像液はそのままタンクに注ぎます。
…701グラムになってるけど平気なのかって?
平気です。
こんなんで本当にちゃんと現像できるのかと心配になりますが…できます!
2-3 ちょっとだけ攪拌したら…ほったらかす
タンクに液を注ぎ終わったら、最初の30秒くらいは密閉したタンクを逆さにして〜戻して〜と、いわゆる「倒立攪拌」なんて呼ばれる作業をします。
最後、テーブルの上なんかで軽くトントンと叩いて衝撃を加えることで気泡を潰します。
そうしたら…
ほったらかします。
そう、これが「静止現像」という名前の由来。
ほっといていいんです。
これが普通の現像だと、
「30秒攪拌して1分静置。これを8回繰り返す」
とか、慌ただしいことこの上ないわけです。
でも、静止現像というのは極限まで薄めた現像液でじーっくり現像を進めていくというやり方なのでタイマーとにらめっこする必要ありません。
なので、まずは30分。信じてほかっときましょう。
その間に読書をするも良し、ゲームするも良し。コーヒーブレイクも良し。
…僕は今回、新緑香る自宅の庭を撮りに行きましたよ(笑
…はい、最初の30分終了。
そうしたら、また30秒くらい「倒立攪拌」で満遍なく現像液を行き渡らせて…。
もう30分ほかっときます。
「SMC PENTAX-FA 50/2.8 MACRO…やはり開放から切れるぜ…」
とかやっている間に、また30分経過。
合計1時間のほったらかし。
これにて、現像作業そのものは完了です。
3.定着前の水洗
現像が終わったらタンクから現像液を排出して、軽く水洗を行います。
本来なら停止液を入れてこれ以上現像が進まないようにするところですが…静止現像の場合、一時間かけて、もうこれ以上現像が進むことはないという状態にしています。
要するに、
「現像液が持つ現像を進める能力を全部使い切るまでほかっとく…」
というのが静止現像のキモなわけです。
なので、停止液で現像をストップするのは意味がありません。
ジャバジャバお水入れて、捨ててを2〜3回繰り返してタンク内をスッキリさせておくだけで大丈夫。楽ちん。
排出した現像液の処理については…ちょっとデリケートな話になるので、
「各自治体のルールに則った処理をお願いします」
としておきます。
最初からほぼ水な上に、薬品としての能力は現像作業で疲労しきって残っていない…んですけど…ね?
4.定着作業
水洗が終わったら、先ほどの2倍希釈したスーパーフジフィックスを投入して定着を行います。
新品の定着液の場合、5〜6分程度でOKです。
ここは、通常の現像と同様に、
『最初の1分は連続して攪拌』
『1分間静置後、10秒攪拌し、また1分静置』
『これを規定時間繰り返す』
というやり方で行う必要があります。
…とは言え、僕の場合はここもアバウトです。
タンクを密閉したら適当に上下に返して、ちょっと置いておいて、また上下に返して…で5分。
これで失敗したことはないです。
1年以上前のネガもきれいに残っています。
使った定着液は、再利用するので保存容器に戻しておきます。
5〜6回使ったら交換するようにしています。
ここもアバウト。
大丈夫、できます。
2回目以降は、定着能力が少しずつ落ちていくので1分ずつ定着の時間を延ばしています。
つまり、「定着に10分かかるようになったら交換時期」と覚えておくと楽です。
5.二度目の水洗
定着液の成分を一度きれいに洗い流すため、またジョボジョボ水を入れて水洗します。
適当に2回くらい入れ替えたら十分かと。
6.水洗促進剤を入れて最後の水洗
奥にある水色の液体が、水洗促進剤。
『富士QW』を使う場合、2リットルの促進剤が作れます。
で、こいつはフィルム100本くらいは効果が持続するらしいです。
タンクに注ぎ込んで、1分くらいまた上下に返し、水洗促進剤を行き渡らせます。
これで20分かかるとされる最後の水洗が、5分で済むようになります。
使った促進剤はまた保存容器に戻しておきましょう。
なんせ100本分ですから…そうそう交換しないで大丈夫です。
最後の水洗をします。
これは今までの水洗と違って、5分間水を流しっぱなしにしてきっちり洗いきります。
水道の水を5分も出しっぱなしにするという…ちょっと昭和生まれには罪悪感を覚える作業です(笑
この水洗が終われば、現像作業は完全に終了。お疲れ様でした!
7.ドライウェルにくぐらせる。
水洗が終われば、ついにタンクを開けて現像したフィルムとご対面です。
洗面器にキャップ半分くらいのドライウェルを垂らし、水を張って泡立たせます。
その中に……
現像したフィルムをどぼーん!
これで、乾燥させる時に水滴がフィルムに残らなくなります。
8.乾燥させる
引き上げたフィルムを、お風呂場など埃が付きにくい場所に吊して乾燥させます。
重りのついた専用のフィルムクリップを使うと、フィルムがカールしてしまうのを防いでピンと干せますが、洗濯ばさみでもなんら問題は無いと思います。
下にくっついてるのが、重り付き。
なんなら、洗濯ばさみを3〜4個繋げておけば十分な重りになるんじゃないかとー。
洗濯ばさみに石ころをテープで貼り付けて重りにしている人のブログを見たことがあります(笑
9.現像できていることを確認し、ニヤニヤする(笑
綺麗に抜けて像が出ていることを確認し、ニンマリします。
この感動を味わうために自家現像をやっていると言っても過言では無い…そんな瞬間。
文字で書き起こすと、どうしてもそれなりに長くなってしまいますが…美しく現像されたネガが目の前に現れる喜びと興奮は、本当に何度体験しても素晴らしいので、ぜひ挑戦してほしいと思います!
大丈夫、何度も言いますけど…簡単です!
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では、今回は前編ということでここまで。
次回は、乾燥が終わったフィルムを回収してデータ化するまでをやっていきます。
(2023/07/04追記 後編を公開しました)
今回のお供
今回はすべてこちらの組み合わせで。
この古いFAマクロが、次回大活躍!!